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葡萄解説

苗木の植え付けと管理

 当社ではウイルスフリー苗を中心に育苗していますが、この苗木を順調に生育させるためには、保管と植付けに当たって、様々なきめ細かい注意が必要です。植付け方に問題がありますとせっかくの苗木が萌芽しなかったり、枯れてしまうこともあります。下記の注意事項をよく読んで、管理に手抜かりのないよう、大切に育てて下さい。

1. 春植えすること

 秋植えする方法もありますが、冬は寒さと乾燥のため一本一本完全に防寒しないと危険です。休眠期間中は土中に仮植しておき、春植えした方が安全です。

2. 仮植時の注意事項

 到着した苗木は根を12時間ほど水に浸けて吸水させます。仮植前に品種名、台木名の保証ラベルを外し、その替わりに土中に埋めて長時間置いても腐らないしっかりした園芸用ラベルに取り替えます。
 仮植場所は排水の良い、乾燥し過ぎない、日当たりの良い土地を選ぶこと。未熟な有機質の多い土はカビが発生して芽や根が傷む危険がありますので避けて下さい。また、建物の北側の陰など、冬に長期間凍結するような場所は最も良くありません。
 苗木を束のまま、穂木の部分を地表上に露出させて仮植しておきますと、束の間の空間が埋められていないので乾燥が甚だしく発芽不良か枯死を招きます。束をばらして1本ずつ斜めに並べ、土をあっさりかけてから水をたっぷりやると隙間に土が入り込み、苗木全体が完全に土と密着して土中に埋まります。さらにその上に土をかけ、全体が凍結層の下に埋まるように土を盛り上げ、覆土の上に乾燥と寒さを防ぐようワラなどでマルチしておいて下さい。

3. 定植時の注意

 成木園内に定植する時、棚上に他の木の枝が伸びて日陰を作りますと、せっかくの苗木が光線不足となり、生育不良をおこしやすいものです。新植園では心配ありませんが、すでに成木がある場合はよほど大きく空間を開けてやらないと、大切な基礎体力作りをしなければならない若木時代に軟弱な幹を作ってしまい将来に悔いを残すことになります。空地で1〜2年養成してから移植する方法もあります。

定植法
定植法
  1. 定植時期は3月下旬〜4月上旬。
  2. 定植方法は、定植図をよく参照し、深さや盛土の程度など全て図の通りに植付けして下さい。この図の通りに植えれば乾燥しないので、ほとんど発芽、活着に成功します。失敗する人の多くは図や文をよく見て参考にせず、自己流の植付け方をしているようです。
  3. 植え穴の中心を深く掘ると後日沈んで接木部が土中にもぐり自根が発生して台木が衰え、接ぎ木した意味がなくなります。苗の直下は10cmの深さにして後で沈まないように堅くして植えるのがコツです。
  4. 植え穴に多肥は禁物です。肥料が多すぎますと肥料焼けをおこして根が傷み芽が伸びなかったり、逆に秋に肥料が効きすぎて秋伸びし、冬に凍害を受けることもあります。燐酸と石灰を少量与え、完熟堆肥を予め土とよく混ぜ合わせておき、もし、化学肥料を使用する時は直接根に接触しないように気を付けて下さい。
  5. 苗の根の先端をやや切り詰め、新鮮な切り口にし、植え穴に放射状に真っ直ぐ広げて伸ばし、軽く土をかけて固定します。
  6. 苗の穂木の部分は約10〜15cmに切り詰めること。これを実行せず長いまま植えて失敗する人がおります。長いとかえって萌芽が悪くなります。
  7. 穂木の部分(接合部の上)に石灰硫黄合剤(2〜3倍液)を塗布して下さい。クロンが製造中止になりましたのでその代わりにベンレートの200倍液を散布すれば黒とう病等の予防になります。休眠期防除としてベンレートの濃厚液は高価ではありますがクロン以上の効果があります。必ず萌芽前までに行って下さい。萌芽後は薬害の危険があります。
  8. 植え穴に土を半分程入れ、たっぷり灌水します。この時、ベンレートの1000倍液(またはトップジンMの500倍液)で灌水すればモンパ病の予防にもなります。水が引いたら富士山型にたっぷり土を盛り上げて苗木全体が土の中に埋まり、見えなくなるようにします。この盛り土をしないで平らに植えると、地温が低く根がまだ活動していないので穂木の部分が乾燥した冷たい風に晒されて乾き、非常に萌芽が悪くなり失敗します。盛り土の山をさらにワラ等の被覆物で丁寧に防寒する場合もあります。
  9. 4月上旬になり、芽がふくらみかけたら、盛り土を芽の位置まで削って(除草を兼ねて)、支柱を立て、伸びてくる新梢を誘引します。土取りが遅れると土中で芽がもやし状になり失敗します。
  10. 新梢は発育のよいものを1本残し、万一に備えてスペアの芽をその下にもう1本残してその芽の先端は摘芯し、それ以外の芽は全部掻きとります。主梢が30〜40cmに伸びた頃までに盛り土は平らにし、接合部が露出しているかどうかも確認して下さい。
  11. 1年目の勝負は徹底した消毒で決まります。防除暦に準じて、5〜9月まで、10回程度の消毒をします。大切な将来の主幹がつる割れ病や黒とう病の被害を受けると回復不能になります。5〜6月はジマンダイセンを主体に、7〜9月は品種や生育に応じた比率と濃度のボルドー液(充分伸びたら6−8式など)で苗木全体をボルドー液色に染めるほど丁寧にたっぷりと散布すること。根元や幹をコウモリガなどの害虫に食害されないように殺虫剤も数回混用散布して下さい。