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Commentary

葡萄解説

台木の選び方

 初心者にとってブドウの台木の選び方は専門的で難しい面があります。ここでは台木に関する基本的なことを説明させていただきます。
 ブドウの苗はほとんど全て台木に接木しています。これは北米に生息していた「フィロキセラ」というブドウの根から養分を吸う、根アブラムシを防ぐ目的で行っているのです。この虫がヨーロッパに蔓延したため、1860年代、欧州全土のブドウは存亡の危機でした。台木を使わない苗(自根苗)はこの虫に弱く、ブドウの品質が落ち、衰弱してしまい、木の寿命が短いのです。台木は北アメリカの野生ブドウを改良して用いています。これらの台木は根が硬く「フィロキセラ」に抵抗性があるためです。
 台木品種は数多いですが、基本は3種の純粋種を使って、2種を交配したものか、それらのどれかと欧州種(ヴィニフェラ)を交配したものです(表参照)。三つの原種中、「リパリア」(川ブドウ)は河川の低湿地に自生していて根が浅い性質です。「ルペストリス」(岩ブドウ)は岩の多い痩せた傾斜乾燥地に自生していて根は深く、耐乾性があります。「ベルランデイエリ」は石灰岩土壌に生息していてこれも強靭で、耐乾、耐石灰性があります。
 なお、欧州種が片親の台木は抵抗性が弱いので、米国では突然変異した新しいタイプの「フィロキセラ」の被害を受け大面積のブドウが枯れて大騒ぎになった経緯(1970年代)もあり、警戒を要します。米国のカリフォルニアでは豊産性の「アラモン×ルペストリス」・AXR(エーエックスアール)種を使っていたのです。(当所の台木の中では「1202」、「イブリフラン」は欧州種が片親に入っている台木です)。
 日本には欧米から明治、大正時代に台木が導入されて研究が進み、日本の気候や土壌、栽培品種に適した台木が選ばれています。数代に及ぶ長い台木使用の経験の中から日本で今、最も人気が高い品種は「ベルランデイエリ×リパリア」のテレキ系台木です。中でも「テレキ5BB」の人気は圧倒的で、強健性、早熟性、品質向上性など総合的に最優秀です。当所でも使用台木の60〜70%は「テレキ5BB」です。テレキ系の兄弟品種「8B」、「5C」、「無毛テレキ」(テレキH)は皆「5BB」とほぼ同様に、適応性が高く優秀です。
 より早熟性を望む場合は「101−14」台か純粋種の「リパリア・グロアール・ド・モンペリエ」が早いのですが、乾燥に弱く、やや短命で収量も少ない欠点があります。乾燥したやせ地や傾斜地では「3309」が強く、特にワイン用苗木には人気があります。
 当所では長年の経験からおのおのの品種に適した台木を選んで接木しております。通常は台木の選定は当所にお任せ下さい。少量生産の台木をご希望される場合、またワイン用苗の場合など、ご予約を戴いてから接木いたします。接木最適期の2月上旬から接木する関係上、早めにご予約下さいますようお願いいたします。

【主要台木用品種の特性】

注)フィロキセラ抵抗性については、日本では問題なく全品種利用できるため割愛した。
台木品種 台負け 耐寒性 耐乾性 耐湿性 石灰抵抗性 根群 発根 樹齢 収量 熟期 品質 着色 実止まり
リバリア グロワールド モンペリエ(純粋種) 極くする やや強 やや弱 細・浅 極早 優良
ルペストリス デュ ロット(純粋種) しない 極強 やや強 太・深 不良
ベルランディエリ レッセ―ギ 1号(純粋種) する 極強 やや深 不良 やや早 極良 極良 中?
リパリア×ルペストリス 3309 少ない 極強 極強 やや弱 やや長 やや多 優良 極良
リパリア×ルペストリス 3306 ややする 極強 やや弱 やや多 やや早 優良 極良
リパリア×ルペストリス 101-14 ややする やや弱 やや強 やや少 極早 優良 極良
ムルベートル×ルペストリス 1202 しない 極強 太・深 最長 極多
ルペストリス×カベルネ イブリ フラン しない やや弱 やや強 太・深 極多
シャスラー×ベルランディエリ 41-B ほとんどしない 中〜弱 やや強 やや強 やや強 太・深 極不良 極多 やや早 優良 極良
ベルランディエリ×リパリア テレキ 5BB ややする 極強 やや弱 極強 やや浅 やや早 優良 極良
ベルランディエリ×リパリア テレキ 5C する 極強 中〜深 優良 極良
ベルランディエリ×リパリア テレキ 8B する 中〜強 やや強 不良 優良 極良
ベルランディエリ×リパリア SO4 する 強やや深 やや早 優良 極良
ベルランディエリ×リパリア 420A 少ない 極強 極強 中〜強 細・中 極不良 やや早 優良 極良 極良
モンティコラ×リパリア 188-08 ややする 極強 ? やや深 不良 優良 極良