葡萄解説

シャインマスカット

　昨年の販売順位は、相変わらず人気の「シャインマスカット」が第1位です。第2位は「マスカットノワール」以下「マスカ・サーティーン」「スカーレット」「巨峰」「ピオーネ」「ヌーベルローズ」「クイーンニーナ」「デラウェア」と第9位まで続きます。弊社の新品種が期待されております。
　「シャインマスカット」はまだ高値が続いております。「シャインマスカット」の親のうち、父親の「白南」は私が交配作出した品種で、品質・食味は最高でした。母方に「スチユーベン」が加わったことで、欧州種に限りなく近い欧米雑種ですから、耐病性強く「鬼に金棒」の品種であり、多くのブドウ栽培者に福音をもたらしている画期的な品種です。
　さて、早熟の紫黒色・巨大粒・種なしの「ブラックビート」（第11位）がデビューしたのが2006年でしたが、2008年には第１位を獲得しました。このような猛スピードでトップに登りつめた品種でした。「ブラックビート」の親は「藤稔×ピオーネ」ですが、両親より早熟で着色が優れ、品質も高く、上品な香りがあります。最大の強みは、気温の高い気候でも完全着色するという着色の良さです。但し、着色先行型の品種ですから、完熟には着色後10日以上かかります。未熟な酸味の強いブドウを早期出荷しますと、評判を落としてしまいます。食味で判断して、完熟果をご出荷下さいますようお願いいたします。
　販売順位が第17位の「マスカットベーリーA」は日本を代表する赤ワイン用品種として着実に伸びております。また、「甲州」（第18位）は白ワインの代表的品種です。近年、酒質が格段に向上し、評判がよく、ロンドンを始め、世界各地に輸出するなど、期待が高まっております。
　さて、第6位の「ピオーネ」に関しては、着色良好な選抜種を再組織培養してよりよい系統に順次切り替えております。「巨峰」も選抜飯塚系２号から再選抜した、より着色の優れた、果粉の厚い系統を再組織培養いたしました。その他の品種も主要なものから順次、ウイルス汚染を防ぐため再組織培養しております（台木品種、ワイン用品種を含めて）。
　このように有望品種が増えて、ブドウ産業はますます多彩になってまいりました。さらなる発展を期待して、有望新品種を取り入れ、人気絶頂の「シャインマスカット」に匹敵する個性ある様々な品種をご提供すべく、育種も継続しております。今後とも所員一同、懸命に努力いたしますので、よろしくご支援、ご愛顧のほどお願い申し上げます。