2014年(平成26年)ブドウ品種販売順位

当所調べ:生食用ブドウ品種の販売順位と特性 

                 

説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: shine muscat昨年の販売順位は、「巨峰」を抜いて「シャインマスカット」が第1位に戻りました。一昨年、「巨峰」が第1位に復活した最大の原因は、度重なる異常高温の影響です。「巨峰」を超えて長年第2位だった高級種「ピオーネ」の着色が温暖化を受けてだんだん難しくなったため、「巨峰」の方がより安定栽培ができると多くの生産者が「ピオーネ」を諦めて「巨峰」に回帰したためだと思われます。

 

「シャインマスカット」は消費者に浸透して高値が続いております。本種は黄緑色のジベ処理無核種で、優美な外観をもち「巨峰」と同期の最早熟品種で糖度も非常に高く、20度を超え、品質よく、上品なマスカット香があり、皮ごと食べられます。樹勢も強く、強健で耐病性が強く、栽培も比較的容易です。交配の親のうち、父親の「白南」は私が交配作出した品種で、品質、食味は最高ですが、果皮の汚れがひどく諦めた品種です。母方に「スチューベン」が加わったことで、欧州種に限りなく近い欧米雑種ですから、樹は丈夫で「鬼に金棒」の品種であり、全国のブドウ栽培者に福音をもたらした画期的な品種です。本格的な出荷が始まり、消費者に注目されて市場値が高く、苗の売れ行きは相変わらず好調です。

 

 第3位は「ピオーネ」、「デラウェア」も復活して第4位です。「ブラックビート」がデビユーしたのが2006年でしたが、あっという間の2008年に第1位を獲得しました。このようなスピードでトップに登りつめた品種は過去に例がありません。本種への期待の大きさをうかがい知ることができますが、昨年は第8位に後退しました。この「ブラックビート」の親は「藤稔」×「ピオーネ」です。本種は両親より早熟で着色が優れ、品質も高く、上品な香りがあります。最大の強みは気温の高い南熊本でも完全着色するという着色の良さです。当所のサイドレス被覆ハウス内では7月下旬に着色が完了し、8月上旬には全果房が完熟してしまい、その着色とボリュームの見事さに本当に驚暵いたしました。驚異的な早熟巨大粒紫黒色種なし品種です。両親を超える優秀さがあり、ブドウ産業を活気づける救世主的な新品種といえます。但し、着色先行品種であり、どうしても色だけで判断して、未熟な酸味の強いブドウが早期出荷された結果、いい品種であるにもかかわらず評判を落としてしまいました。危惧していたことが現実になってしまい誠に残念です。本種はくれぐれも完熟するまで収穫を待って、食味を確認の上ご出荷下さいますようお願い致します。

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さて、国作出の「オリエンタルスター」(第21位)は「シャインマスカット」と母親が同じで、交配の親は(「スチューベン」×「アレキサンドリア」)×「ルビーオクヤマ」です。「スチューベン」が祖母として入っているということが重要でして、品質は欧州種のように高級ですが、米国種の遺伝子が入った欧米雑種ですから、栽培し易く、耐病性ある品種です。種なし化でき、皮ごと食べられ、肉質も良く、棚持ち、貯蔵性抜群の魅力的な品種ですが、粒張りが問題で大粒の「シャインマスカット」の人気には追いつけません。じわじわと実力を発揮して人気が上昇することを期待いたします。

 

販売順位が5位の「マスカットベーリーA」は日本を代表する赤ワイン用品種として着実に伸びております。また、「甲州」(第7位)は白ワインの代表的品種です。近年、酒質が格段に向上し、評判がよくロンドンを始め、世界各地に輸出するなど、期待が高まっております。

 

さて、第3位の「ピオーネ」に関しては、着色良好な選抜種を再組織培養してよりよい系統に順次切り替えております。本年2位の「巨峰」も選抜飯塚系2号から再選抜した、より着色の優れた、果粉の厚い系統を再組織培養いたしました。現在、ブドウの主役はやはり「巨峰」と「ピオーネ」が両横綱であり、これらは特に最高の系統を選ぶ必要があるからです。その他の品種も主要なものから順次、再組織培養しております(台木品種、ワイン用品種を含めて)。

 

9位「藤稔」以下、「サマークィーン」「紫玉」「雄宝」「コトピー」「安芸クィーン」「高墨」「サニードルチェ」「ゴルビー」「ブラックオリンピア」「高妻」「赤嶺」「オリエンタルスター」と人気品種が続きました。第21位までの品種中、12品種が巨峰系品種群に属します。日本の主要品種の半数以上が種なし化できる4倍体品種群になり遺伝的に安定していて栽培し易く、生産も安定している2倍体品種の方が押され気味という状況です。

 

日本特有の、高温多湿の気候に適応できる品種を目指して育種したからこそ、こういう優秀な4倍体ブドウ群が育成できたのです。「巨峰」から始まった日本原産の品種が、全国各地の育種家に引き継がれ、ジベ処理による種なし化の成功もあって、現在、世界に類を見ない4倍体品種を柱とするブドウ産業が確立して今日を迎えているのです。

 

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たとえば、石川県の「ルビーロマン」(藤稔の実生、鮮紅色超巨大粒、種なし、初値が1kg50万円のご祝儀相場になり、話題を呼んでいる新品種)、長野県の「ナガノパープル」(親は「巨峰」×「ロザリオビアンコ」とされていたが、DNA解析の結果、「巨峰」×「リザマート」と判明、紫黒色巨大粒で種なし、皮ごと食べられ人気沸騰)などなど、今はそれぞれの県の特産品として独占栽培され、作出県外での栽培はできませんが、いずれ許されて全国栽培される日が来るでしょう。

 

「瀬戸ジャイアンツ」が第23位、「ロザリオビアンコ」が第28位です。いずれも同系色、同系統である「シャインマスカット」に対する生産者の人気に押されたものと思われます。

「黄玉」(第40位)はジベ処理した種なし粒が肥大よく、「翠峰」より早熟(8月下旬〜9月上旬)で糖度も非常に高く、香り、コクがあり観光、直売などで大評判です。「ゴールドフィンガー」(第41位)はピッテロ型の指のように長い粒が外観良く評判で人気があります。「マニキュアフィンガー」(第31位)は中国では「美人指」という名前で人気高く、この品種の栽培専門書も中国で出版され普及しております。弊社の新品種「ジーコ」(第59位)は「ロザリオビアンコ」の子供で、抜群に味がよく、「ロザリオの黒」とも呼ぶべき新品種です。「シャインマスカット」にこの「ジーコ」を交配した中に黒い品種が昨年初結果しております。これも楽しみです。

 

また、弊社作出の「紫苑」(第30位)は岡山県で特に注目されております。このように地域的な特産品種も生まれ、消費者の嗜好もますます多様化してきました。

 

趣味で家庭栽培される方々も多く、病気に強く栽培容易な「ナイアガラ」(第25位)、「スチューベン」(第27位)などもよく売れるようになりました。プロ級の難しい高級種を立派に作りこなす趣味栽培家もおります。たとえば弊社が育成した観賞用の「レッドネヘレスコール」(第57位)を庭で育てますと7080cmを超える鮮紅色で長大な、藤の花のように見事な房になります。趣味の園芸栽培家にも喜んでいただけるような、栽培容易な品種の開発も進めたいものです。

 

このように有望品種が増えて、ブドウ産業はますます多種多彩になってまいりました。日本の経済はいまだ厳しい状況が続いておりますが、政権が安定し、経済が成長路線に戻れば、われわれの果樹産業、ブドウ産業にも明るい兆しが見え始めます。さらなる発展を期待して有望品種を取り入れ、さらに魅力ある美味しいブドウを消費者に届けたいものです。