●葡萄品種解説について

はじめに

いつもお引き立てありがとうございます。

 
さて、「シャインマスカット」の人気上昇が止まりません。昨年の弊社販売順位も連続の第1位でした。業界のアンケートでも日本の果物界のトップスター品種として定着した感があります。種なしで皮ごと食べられる特性が、現代人の心をしっかりとつかんだようです。「シャインマスカット」の登場でブドウ界の潮目が変わったような気がいたします。


平成15年より、私・植原宣紘は「ブドウ品種の育成・普及」の功績により「農水産技術情報協会理事長賞」「園芸研究功労賞」「千葉大園芸学部松実賞」、山梨県からは「県政功績者賞」などを受賞いたしました。平成26年秋には国から「黄綬褒章」の栄に浴しました。父・植原正蔵の代から始まり、多数の品種を開発できましたことは、ひとえにご栽培下さった皆様方のお陰です。ご支援下さった全国の多くの皆様方に心から深甚なる感謝の意を表します。


ところで、昨年度の苗木販売順位を見ますと、父の作出した「甲斐路」は順位が下がり、私の育成品種「ロザリオビアンコ」も下がりました。これらの品種の食味は優れていても、種ありで果皮が厚く、皮ごとは食べられないから「シャインマスカット」の魅力に勝てないのでしょう。


そこで、最近の育種の目標は、人気品種「シャインマスカット」を親にして、種なしで皮ごと食べられる、品質の高い早熟〜中熟品種を作出することです。数年前から「シャインマスカット」の子供たちが結果し始め、その中から白・赤・黒系統の三十数種を選抜し、試験栽培を始めております。本年はその中から「シャインマスカット」以上に皮ごと食べ易い、期待が持てる種なしの新品種を2品種発表いたします。


なお、社内で検討の結果、受注生産品種の中でご要望がほとんどない17品種の保存と苗木生産をやむなく停止いたしました。

新たな時代の要請に応え、「育種なくして発展なし」の信念を持って、これからも育種を続けてまいります。

皆様方のますますのご支援、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

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●新発表の最新品種などについて

  

本年は最新の2品種を発表し、新発売いたします。

弊社育成の「マスカ・サーティーン」(14頁)は本年度の表紙を飾る「ロザリオロッソ×シャインマスカット」の中から選抜した黄緑色品種で、「ヌーベルローズ」と兄弟品種です。マスカット香があり白の13号(英語でサーティーン)ですので、この名前にいたしました。2011年の初結果ですが、原木を移植したため発表が遅れました。「シャインマスカット」よりマスカット香が上品で、食味もコクがあり美味しく、種なしになり果皮ごと食べられ、「シャインマスカット」より皮が食べ易く、透明感があって外観もよく、人気品種の「シャインマスカット」を超える魅力があります。「ロザリオビアンコ」の味に「シャインマスカット」の長所を加えた新品種が出来ました。弊社の主力品種に育ててゆきたい新発売品種です。

もう一品種の「マスカット・ノワール」(15頁)は弊社交配の「シャインマスカット」×「ジーコ」です。2014年初結果した着色のいい紫黒色で、期待していた「シャインマスカットの息子」です。これで白・赤・黒の三色の皮ごと食べられる種無しの「シャインマス」の子供が揃いました。マスカット香があり、食味もよく、裂果も見られません。命名のノワールはフランス語の黒色です。黒い「シャインマス」として成木化するのを楽しみにしております。

 
 
 

これに加え、弊社育成の「ヌーベルローズ」(16頁)は「ロザリオロッソ」×「シャインマスカット」の交配で美しい鮮紅色、楕円形中粒品種です。ジベ処理すると種なしになり、皮ごと食べられ、マスカット香があり、20~22度と高糖度で非常においしい食味です。「シャインマスカット」と比べ、やや小粒ですが、果皮が薄く、抵抗なく皮ごと食べられ「シャインマスカット」を超える食べ易さです。早熟で美しい色と、香りの良さが特徴です。「シャインマスカット」の子供で、この他に香りのいい赤い品種はまだ発表されておりません。

 
  

山梨県のオリジナル品種「ジュエルマスカット」(18位)(17頁)は、山梨県果樹試験場が「山梨47号」×「シャインマスカット」の交配によって得られた新品種です。大粒の黄緑色長楕円形品種で、「シャインマスカット」より10日程成熟が遅い、ボリューム感ある品種です。ジベ処理で種なしになり、皮ごと食べられます。糖度高く、肉質もいい品種ですが、マスカット香はありません。本種は今のところ、山梨県のみの限定販売品種です。

次に、期待のワイン用品種、「モンドブリエ」(ワイン用29位)(41頁)は山梨県が国の要請を受けて育成した新品種で、「シャルドネ」にベと病に強い「カルガ・ホワイト」を交配した品種。黄緑色、小振りの小房で糖度は23度程度と高く、耐病性、耐寒性強く、豊かな香りのワインが出来、評価の高い品種です。本種は全国販売いたします。

「サマークイーン」(第13位)(18頁)は当所が「ゴルビー」に「紅伊豆」を交配して育種した最早熟の鮮紅〜紫紅色巨大粒品種です。親の「紅伊豆」は軟らかい肉質が難点ですが、「ゴルビー」を父親にして、やや果肉が締まり、糖度が高く、濃厚な食味の早熟品種が生まれました。着色がよく観光園に最適ということで、秩父のブドウ生産グループが命名してくれました。耐病性も強く、栽培も容易ですから趣味栽培にも適しています。

「ブラックフィンガー」は中国名「黒美人指」と呼ぶ、「マニキュアフィンガー」の子供です。中国の育種家、徐衛東氏作出です。素晴らしい外観と品質で皮ごと食べられますが、ビニール被覆栽培でないと日本では裂果しやすく、残念ながら露地栽培には向きません。

志村富男氏の極大粒黄金色の「雄宝」(12位)(20頁)と着色容易な鮮紅色の「コトピー」(15位)(20頁)、及び、当所交配の黄緑色巨大粒の「翠星」(23位)(19頁)と、同じく黄緑色巨大粒で栽培容易な「銀嶺」(43位)(19頁)もご好評をいただきました。4種ともジベ処理で巨大粒種なしになります。

雄宝」の交配は「シャインマスカット」×「天山」と訂正されました。ジベにフルメットを混用して処理すると25gの巨大粒になり皮ごと食べられる黄緑色でボリューム満点の話題品種です。「コトピー」は「甲斐乙女」×「シャインマスカット」で、着色よく、「シャインマスカット」大の粒になる作り易い紅色種です。

また、「翠星」は当所の副所長・植原剛が交配した「ゴルビー」×「翆峰」で、ボリューム感ある黄緑色品種です。最大の特徴は8月中〜下旬に20度に達する極大粒の早熟種であり、親の「翆峰」より一ヶ月早熟になりました。これに紫黒色の「ブラックビート」、鮮紅色の「ゴルビー」を加え、8月中に出荷可能な三色揃った巨大粒種なし品種を詰め合わせすると、世界に類のないボリューム感になり実に魅力的です。

「銀嶺」は話題になった山口県産の「しろがね」(白品種と思っていたが実は紅色種だった品種)を父親にしてこれに「翆峰」を交配し、育成した品種です。今度は完全な黄緑色品種で、栽培容易で趣味栽培に最適な早熟巨大粒品種になりました。

国が育成した期待の新品種、「サンヴェルデ」(25位)と「秋鈴(しゅうれい)」(48

位)の2品種も結果しております。「サンヴェルデ」(21頁)は欧州系に近い崩壊性で硬い肉質の黄緑色巨大粒種なし種で「翠峰」より熟期が早く、糖度も高く品質の優れた最新品種です。「秋鈴」(21頁)は福岡農試が育成した着色容易な省力栽培できる種なし2倍体品種で紫赤色短楕円形の赤嶺大の果粒で、皮ごと食べられる、もともとの種なし種です。施設栽培向き品種で露地ではやや裂果の心配があります。満開14日後に一回ジベ処理(100ppm)で果粒を肥大させます。熟期は9月上旬。糖度は18度程度で品質のいい欧州種です。

昨年度売上順の第7位にランクされた「クイーンニーナ」(22頁)も崩壊性の肉質ですから、「サンヴェルデ」と共に、新巨峰系品種が高品質化して徐々に欧州種の肉質に近づきつつある傾向がうかがえます。「サニードルチェ」(22位)(22頁)は鮮紅色大粒の美しい欧州種で、国の要請を受けて、山梨県果試が作出した品種です。肉質はしまり、糖度高く、食味最高の高級種で、果皮ごと食べられます。ジベ処理専用種で種なし栽培します。親は「バラディー」と「ルビーオクヤマ」ですから、品質は親に似て、申し分ないのですが、果皮が薄く、露地では裂果の心配があります。多雨地、肥沃地では被覆栽培の方が安全です。樹勢旺盛で作りやすく、結果も早く、期待できる新品種です。

前述した「クイーンニーナ」は国の果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点が育成した品種で、鮮紅色巨大粒、ジベ処理種なし品種です。本種の親は、(「紅瑞宝」×「白峰」)×「安芸クイーン」、という巨峰系品種で、特出すべきは、色素が多く、着色が良好で、粒は「ピオーネ」より大きく、糖度も高い点です。また、「巨峰」や「ピオーネ」より肉質が硬く、欧州系に似て、噛み切りやすい崩壊性です。昨年は初めて粒の付け根に三日月形の裂果が見られました。潅水に気をつけて下さい。最近の消費者に好感を呼ぶ、期待の最新品種です。